ドーナツホールから見える宵闇

なんとなく思ったことを書いてます

乙女の純情をもてあそんではいけません

23歳くらいの頃、ひょんな事から同じ高校だった男の子と連絡を取り合うようになった。

同じ高校の隣のクラスだった子。爽やかなスポーツマンで女の子からの人気もあった。特に接点はなくて、廊下で見かけるから顔と名前が一致するくらいの関係。

その彼、A君(仮)が何故か私にSNS上でメッセージを送ってきたのだ。内容はごくごく普通な「久しぶり。元気?俺のことわかる?」みたいな感じのもの。

わかるけど、何故メッセージをくれたのかがわからない。

それでも学校で人気のあったA君からの連絡には心躍ってしまったし、SNS上だけの付き合いかもと思い無難な返答をした。

私の何の面白みもないメッセージにも丁寧に返事をくれる。A君は見た目に違わず礼儀正しくて優しかった。それから意外と頻繁にやり取りをするように。そして1か月が経ったころ「もし良かったらご飯でも」と誘われたのだ。

・・・これは、もしかして、そういう感じ?

お互いに恋人はいないという事を確認してからご飯に行くことに。

気軽に遊びに行けるような異性の友人のいない私は大いに動揺し、無駄にめかしこんで行った。もしかしたら同窓会的な集まりに呼んでくれただけの可能性を考え、冷静に冷静にと自分に言い聞かせる。

待ち合わせ場所に先に来ていたA君は1人だった。記憶の中のままの爽やかな笑顔で私をエスコートしお店まで案内してくれた。そして2人でご飯を食べ、帰りは駅まで送ってくれて爽やかな笑顔で去って行った。その後もA君はよく連絡をくれたし、恋愛に発展する様子はなかったけれど素敵な友達ができて素直に嬉しかった。A君は筋トレが趣味のようで、私のダイエットの相談にも親切にのってくれたし、スキンケアの話題なんかも詳しくて盛り上がった。

3回目のご飯に誘われた時、「連れて行きたい人がいるんだけどいいかな?」と。誰だろう。さっぱり見当がつかない。聞いてみるとA君の大学生時代の先輩とのこと。どうやらA君の尊敬している先輩で、すごく良い人だから会ってみて欲しいと言うのだ。ここでもアホな私は、彼氏のいない私にA君の知り合いを紹介してくれるという事だと思っていた。クリスマスの近い時期だったので浮かれていたんだと思う。

そんな浮かれた状態の私に向かってA君は「すごくカッコいい先輩でさ、色んな知識もあるんだよ。優しいしめっちゃ良い人だよ!実はその先輩から紹介されたサプリメントがあるんだけど、俺それ飲んでから体の調子がすげー良いんだよね。宵闇の夜さんも美容に興味あるって言ってたよね?肌にも良いみたいだからぜひ紹介したくて~・・ダイエットにも~・・」と電話口で丁寧に説明をしてくれた。

あー・・なるほどね。はいはいはい。サプリメントね。え、私、サプリメント欲しいなんて言ったことあったっけ?これって、もしかしてマルチ商法ってやつなんじゃ・・。

頭から冷水を浴びせられるとはこの事だなと思った。やばいぞ、と。どうやって切り抜けようかな、と。とりあえずその日は適当な相槌で電話を切り、後日メールでサプリメントには興味がないから購入はできないとハッキリ伝えた。そういうの無しならまたご飯にも行きたいし、その先輩もぜひご一緒にと書き添えて。A君からは「そっか!わかったよ。ありがとう」とあっさりした返事が来たのでホッとしたが、もちろんその後は連絡も来なくなり3回目のご飯は実現しなかった。

後から考えれば同じ学校だったから最初からある程度の信用があるという事、でも共通の友達はいない事、そもそも私に友達が少ないという事が狙いやすいポイントだったのだと思う。

それからA君とは一切連絡を取っていないので彼の真意はわからない。もしかしたら本当に良いサプリメントを純度100%の親切心で紹介しようとしてくれていたのかもしれない。

 

その他にも選挙権を得た年齢になった途端に、卒業アルバムの住所を見て家まで訪ねてきた同級生もいたな。

相手から近づいてきてくれると嬉しいけれど、こういった経験が増えるたびに身構えてしまうようになる。そして人を疑うようになり、純真な心はなくなっていくのだ。

乙女の純情はもてあそんではいけません。