まだコロナが流行る数年前に池袋の駅構内で迷ったことがあった。
目当ての出口が見つけられなくて案内図を見ていると、急にパンッ!!という乾いた良い音と共にお尻に衝撃が走ったのだ。
え?と思いお尻を押さえながら振り返ると、私のすぐ後ろを通り過ぎて行ったであろう50代くらいのスーツを着た男性の後ろ姿が見えた。
昼間で案内図の周辺には人も少なく、おそらくその男性が私のお尻を叩いていったのだと思う。
最初は何か荷物が当たったのかとも考えたが、その男性は手ぶらだった。
こちらを振り返りもしない背中をぼんやりと見送る。
はて、これは一体何なんだろう?痴漢・・でもない気がする。
たまに向かいから歩いてくる男性が、こちらが避けようとしているのに明らかにわざとぶつかってくる事があるがそれと同じ類なのだろうか。
結構な強さであったため、偶然に手が当たったとも思えない。
お尻をさする、揉む、掴むはまだわかる。いや、それもわからないんだけど。
お尻を叩く・・その心は?
お尻を叩かれて喜んだり嫌がったりという反応が返ってくる相手になら一種の楽しみを見出せるのかもしれない。
でも通りすがりの知らない、大して反応も返ってこない女のお尻を叩く楽しみとは?
叩かれたお尻をさすりながら私は首をひねるしかなかった。
今も真意がわからない不思議な出来事だ。