ドーナツホールから見える宵闇

なんとなく思ったことを書いてます

秘密の傷跡

 


左肩に傷跡があって。

ノースリーブとか着たり、予防接種のために腕まくりをすると見える。

 


ずっと昔の傷だからだいぶ薄くなっていて、パッと見は分からないんだけど少し肌の色が変わってしまったから光の加減でわかる。

じっくりと見たらわかる…のか?

 


自分では全然気にしていなかった。みんなからは見えていないと思っていたのだ。

誰も他人の身体にそこまで興味なんてない。

だからノースリーブも着ていたんだけど、ある日「その傷どうしたの?」と聞かれたことがある。

そこで初めて他人からも見えるんだって気付いた。少しショックだった。

 


今までは皆んなが優しさで傷跡について触れないでいてくれたんだなと知った。

世界は案外優しさでできている。そしていつだってその優しさに私は気づけない。

 


それからはなんとなく袖のない服は着れなくなった。

 


傷跡を隠す良い方法はないだろうか?

 

ふと、傷跡の上から入れ墨を入れてみるのはどうだろうかと思った。

 

 

数年前に職場の同僚の左肩にガッツリとした入れ墨が入っているのを偶々見てしまった事がある。その子はサッとそれを隠した後「誰にも言わないで下さいね。」と少し恥ずかしそうに笑ったのだ。

その時、不覚にも同性相手にキュンとしてしまった。

いつもは隠していること。皆んなが知らないことを知った。他部署の職員なので今までそんなに深く関わったこともなかったのに、その日からなんとなく目で追ってしまう存在に。もちろん私はそのことを誰にも言っていない。

隠されたものを知りたいという欲望は誰でも持ってるのではないだろうか。

 

 

いつもは見る事のできないものを偶然見てしまった。という出来事が心を動かすのか。

 

 

高校生の時にコンビニでアルバイトをしていた時、よく来る若い(といっても私よりは少し年上の)男性のお客様がいた。痩せていて物静かそうで、でもどこか少し悪そうな。夏でも長袖を着ているのが印象的だった。ある日その人のレジをしていたら、その人が袖を肘までまくり上げていた。彼の右腕の内側には火傷の痕のようなものがあった。それを見つけてしまった時も何故かキュンとしたのを覚えている。

あれが恋だったのかはよく分からないけど。

 

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私も何か秘密を持ってみたい。