昔、夜の駅前でお姉さんがおじさんを見送っているところを見かけた。
私はその駅で知人を待っているところだった。
お姉さんは多分飲み屋のキャストで、おじさんがお客さん。
二人ともへべれけで漫画に出てくるような千鳥足だった。
「また来てね!待ってるからね」と何度もおじさんに言うお姉さん。
おじさんはむにゃむにゃと不明瞭な言葉を発しながらも嬉しそうなニコニコ顔。
私には聞き取れないおじさんの言葉をお姉さんは上手に聞き取っていて
「えー無理だよー。私も今日飲みすぎちゃったもん」と笑いながら答えている。
手を振り改札に飲み込まれていくおじさん。見送るお姉さん。
ふらつく足取りのお姉さんを見て、この人ちゃんとお店まで帰れるのかな?と
余計な心配をしていたところ
おじさんが確実に見えなくなった瞬間にお姉さんはしゃきっと立った。
背筋をピンとさせて軽く髪を整えている。
思わず二度見した。だって数秒前と全然違うんだもの。
お姉さんは携帯で誰かに電話をかけ始め
「もしもーし!今日来てくれるって言ってたじゃん。みんなお店で待ってるんだよ」
と甘い声を出しながら颯爽と駅から出て歩いて行った。
その後ろ姿の美しさったら!
絶対1mmも酔っていない。ハイヒールをカツカツと響かせながら階段も何の危なげもなく降りていく。
いやぁ、プロですね。さすがですね。と心の中で拍手を送る。
すっごく良いものを見させてもらった気分になり、その後合流した知人に興奮してその様子を伝えた。
知人も「それはすごい!」と感心していた。
男は狼だから気をつけなさいなんて歌があるけれど、
女にも十分気を付けたほうがいい。
メリークリスマス。